Admin   Newentry   Upload   Allarchives

TeCh-fabrication-

模型とか、ロボコンとか、ものづくり

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Category: スポンサー広告

TB: --  /  CM: --

top △

真・機動戦士ガンダムZX -ゼクス- 第一章 ~守るために~ 上 

ZX
ついに公開にまでたどり着きました・・・。
第一章です。構想3年と言えば聞こえは良いですが、中身は(ry
             真・機動戦士ガンダムZX -ゼクス- 第一章 ~守るために~ 上


人が宇宙を開拓し始めてから、数十年。

地球圏での争いは止むことを知らず、戦いの悲しみのが繰り返されていた。

西暦2145年。そんな戦いに終止符を打つべく、‘ナノドライヴ’を搭載したMSが戦場を支配した。

平和な世界がついに実現され、人々は傷ついた地球を癒すべく故郷を離れ、全人類がコロニーへ移住した。

それから新紀元が提唱され90年。人はまた国際連合と惑星帰還連邦の二つに分かれ、新たな争いが始まろうとしていた。

翔歴0092年。惑星帰還連邦の少年による月面国家皇太子暗殺事件により、ついに戦いの火蓋は切られた。

翔歴0099年。人類の保有するナノドライヴは4つ。これはナノドライヴを巡る争いに巻き込まれた少年の物語である。






 翔歴0099年4月26日(日曜日)午前7時 サイド5 42バンチ‘サディラ’居住ブロック4丁目   東雲高専寮2階5号室
 
 朝を告げるアラームが鳴り響く。ワンルームタイプの部屋には模型の箱や、様々な機械の設計図などが散らかっている。その他には必要最低限の家具と3台のPC以外、目立つ物は無い。
 (もう7時か)と、部屋の主がアラームを止め、ベッドから抜け出す。まだはっきりしていない意識のなか、シンクへ向かう。朝起きたら、まず顔を洗うのが如月啓の習慣だった。次にカーテンを開け、人工太陽の光を部屋へ入れる。
 宇宙に浮かぶコロニーは、それの集まりである‘サイド’を単位として各ラグランジュポイント、火星圏に存在している。総人口が100億を突破し、一度は戦争で半分以下になったものの90億まで膨れ上がった人類は、宇宙へ住みかを移していた。地球が汚染され、人の住める環境ではなかったのが一番の理由だ。全人類が地球を離れるという、想像もつかないスケールの計画だが、今の自分達はそうして生きてきたのだ。移民が終わり、新紀元が提唱されて100年目を迎えようとする人類には、かつての地球を知る人は少ない。
 テレビをつけると、サイド4近くで戦闘があったとのニュースが流れていた。
「またかよ・・・・・・」
 とつぶやく。中立サイドであるこの‘サイド5’には戦争など無縁な単語であった。
 とは言っても、戦争での主力兵器。MS[モビルスーツ]には無縁とは言えない生活を送っている。全MSの生産シェア6割を誇る大企業、東雲重工が運営するコロニーに住み、東雲重工の高等専門学校へ通っているのだ。斯く言う自分もダウンサイジングされたMS、PA[パワーアシスト]の開発を学校の研究テーマとしている。1日に、一度でもMSという単語を聞かない生活をするのも難しいだろう。
 制服に着替え、学校へ向かう。朝食はどこかで買っていくことにしよう。今日は休日だが、同じ研究室の先輩が開発したレーザーランチャーの実験がある。
 PAは安価で汎用性も高く、幅広い分野で使用されている‘重機’で、MSとは違い核融合炉ではなくバッテリー駆動のため、稼動時間や出力に制限がある。よって外部電源やバッテリー無しでの長時間の運用や出力の高い‘装備’の使用などは初めから考慮されていないPAがほとんどである。
 啓の所属する第6研究室。通称[ロクケン]の開発しているPA<ツバキ>は、機動性、出力の向上に稼動時間の延長などを実現している。使用しているバッテリーはまだ開発中のもので、東雲重工の研究部から試験運用を兼ねて寄付されたものらしい。企業の学校ということもあって、パーツや施設などで困ることはまず無い。今回の実験も、出力の高いロクケンのPAだからこそ出来る事である。とは言っても、啓はパイロット科の人間なので作るよりも‘動かす’専門の人間なのだが。
 寮を出て、共有駐車場から適当なバイクに跨る。バイクを初め、自動車、重機の免許を取るのは必修だ。寮に置いてある車両は学生向けに無料に貸し出されていて、特にバイクは移動には重宝する。学生証を兼ねた端末を接続し、水素エンジンに火を灯す。学校―というか、学校の敷地内にある総合演習場―を目的地として設定し、アクセルを踏む。
(翔歴0099年、4月26日日曜日。朝のニュースです。さて、サイド4での連邦軍による奇襲事件についてですが―)
 ヘルメットに仕込んであるスピーカーから、ラジオのニュースキャスターの声が響く。隣接するサイドということもあってか、チャンネルを変更してもどれも同じような内容だった。
 かつて人が住んでいた星、地球。それに帰ろうとする人たちと、それを良しとしない人たちとの戦争。正直、どちらが正しいのかわからない。地球への好奇心は無いと言えば嘘になるし、過去に人は地球を滅ぼしかけた歴史から何も思わないわけではない。連邦の事を連合の人は‘地球の重力という鎖に繋がれたままでいる’と揶揄するが、いつまでも地球圏から抜け出せないでいる自分たちも、同じ様に‘鎖に繋がれたまま’なのではないか。
 結局、人はどっちつかずのまま100年も過ごしてしまった。23年前、独立戦争が起きたときに提唱された―宇宙に対応した、人の行き着くべき姿―ニュータイプ思想もいつの間にか薄れ、せいぜい歴史の教科書で目にする程度だ。
 戦争の反省から故郷を飛び立ったはずなのに、その後に二度も同じことを繰り返している。ニュータイプが存在するのならば、火星圏へ旅立った人たちがそうなのだろう。しかし地球圏にも、同じ様な‘引っ張り役’が必要なのは確かであった。
 人が変わるときは来るのだろうか。そこまで思考したが、それまでの考えは風を切る音にかき消された。



 同時刻“サディラ” 工業ブロック 東雲重工第4ファクトリー

「これが・・・・・・ガンダム・・・・・・」
 そうつぶやくと、隣のスタッフがうなずく。
 本来は戦場で向き合うはずの機体が、こうも無防備な姿で向き合っているというのはまさにMS産業界の縮図の様であった。それもどちらも敵国同士の‘秘密兵器’と来たものだから、驚きを隠さずにはいられない。何重もの審査を通り抜け、スタッフに連れられること一時間。やっとたどり着いた工場のハンガーを見渡した里海蓮の、それが最初の感想だった。次いでその視線は、二機の‘秘密兵器’―ナノドライヴ搭載機―に注がれる。
 どちらも直線によって構成され、惑星帰還連邦軍の使うの様な曲線美は無い。かと言って、国際連合軍採用機の様な工業的なデザインでもない。どこか無骨でありながら、スタイリッシュな面も持っている。
 東雲重工は西暦から続く老舗企業で、家電からMSまでありとあらゆる分野で展開している。元々は地球にあったトウキョウという都市の町工場が合併して出来た小企業だったが、今はそれを全く感じさせない。そして東雲重工の代名詞と言っても過言ではないのが、「ガンダム」という単語だ。
 東雲重工製MSの中でも、その時代の技術を極限まで詰め込んだワンオフ機。それには必ずガンダムという名が冠されていた。由来は不明だが、伝統のようなものだ。半分プロパガンダとしての役割もあるのだろう、戦記物には必ずと言っていいほど登場し、多くの人々を惹きつけてきた。また、歴代のパイロットのほとんどがニュータイプと思わせる能力を発揮しており、最後の戦争から25年以上も経った今もニュータイプ思想が消えずに残っている要因のひとつだろう。
「右手にあるのが、。左手にあるのが、―いえ、です」
 事前に渡されていた資料には<ゼクス>が近接戦闘型。<ゼクサス>が遠距離砲撃型とあった。機体の大まかなラインは同じだが、カラーリングは勿論のこと武装も大きく違っていた。<ゼクス>には大剣が。<ゼクサス>には、フラカストロ粒子の影響で昨今では珍しい、巨大なランチャーがバックパックに装備されている。
「機体の引き取りは予定通り行う」
「わかりました。準備は開始していますが・・・・・・」
 続きを話すのに少し考えているようなスタッフに「どうした?」と問いかける。
「ちょうど同じ時間に連合軍が、港に立ち寄りますので・・・・・・」
 港とは、その名の通りコロニーの港である。物資の班入出、コロニー間での移動などはすべてここで行われる。コロニーの構造上、また防衛上ひとつしか存在しない。その港に連合の船が来るということは、しばらく足止めを食らうことになる。しかしそれよりも問題だったのは―
「そんな事は全く聞いていない。どういう事か説明してもらいたい」
「すみません。私達も、つい先ほど知らされて・・・・・・」
 恐らく本当にそうなのだろう。いくら最高機密のMSの開発に関わっているとはいえ、あくまで企業の社員でしかない。
「<ゼクス>の引渡しの日程は?」
「それは回答しかねます」
「・・・・・・そうか」
 同行してきたヨハネス・ピロポノス中尉に「それが今日、という偶然はあると思うか?」と耳打ちする。中尉は「念のため、早めに出た方が良さそうですね」と返す。
 引渡しが終わってからならまだしも、それ以前での接触はなんとしても避けたい。ナノドライヴは公式発表では4基全て破壊されている。まず‘存在しない’MSなのだ。相手がどのような手に出てくるかわからないし、もしこのナノドライヴを失い連合が独占するようになってしまうと、連邦は失速してしまう。
 <ゼクサス>の受け取りと、<ゼクス>の奪取。今回の任務はその二つであったが、場合によっては<ゼクス>は諦めるしかないかもしれない。
「予定より2時間早く引き渡しを行う」
「2時間ですか・・・・・・。わかりました。輸送は予定通りで?」
「ああ。だが、万が一は戦闘が発生する恐れもある。付近に待機させた二個小隊で応戦しつつ、途中からはこちらで用意したSFSで船まで運ぶ」
「了解しました。コロニーを傷つけるような事は避けてください。これだけはお願いします」
 最後の言葉には力がこもっていた。「承知しています」と答え、その場を離れる。
 引渡しまで2時間。それは同時に、住み慣れたこの島とも後2時間で別れなければいけないという事でもあった。



 午前8時半 東雲高専 総合演習所 

「ようし。啓、ランチャー接続だ」
 ヘットギアのスピーカーから、武田先輩の威勢の良い声が響いてくる。「了解」と無線で応答し、ジョイスティックに手を伸ばす。
 PAのコクピットは、MSのそれと基本的に同じである。火器管制の有無が一番の違いだが、操作系はすべて同じ規格で、最近普及してきた全天周囲モニターを採用しているこの<ツバキ>は、MSのコクピットと言われても違和感が無い程である。無論、緊急脱出装置のレバーが腰に当たる仕様も同じく再現されていた。脱出時にはコクピットごと脱出ポッドとして射出される仕組みだ。このポッドには唯一スラスターが装備されている。
 演習所にはいたるところに格納庫があり、こうして実験機体の整備などが行われている。今日は休日ということもあり、ロクケン以外に使用者は皆無でほぼ貸切状態だ。
 天井から吊り下げられたレーザーランチャーのグリップを、右腕のマニピュレーターで掴み、左腕で担ぐように砲身を支える。グリップのコネクタとマニピュレーターのコネクタが接続され、レーザーランチャーの情報が表示される。ツバキのバッテリーから放電が始まり、レーザーランチャーの充電状況が新たに表示される。マニピュレーターのコネクタひとつで全てを行っているので時間がかかると思っていたが、案外早く終わりそうだ。
「武田先輩、接続終わりました」
「了解した。充電終わるまで後どれくらいだ?」
 既に全体の4割の充電が完了している。この速さなら、後―
「余裕もって3分ですかね。とりあえず<ツバキ>は出しときますか?」
「ああ。そうしよう。今シャッターを開ける」
 その後、「全員<ツバキ>から離れろ! 動くぞ!」と声が響き、格納庫のシャッターが開いていく。いつもならオペレーターは同級生の里海蓮と、晴菜麻友が行うのだが、蓮は病欠。麻友は友人と市街の方へ買い物に出ている。蓮はもともと体が弱いので納得できるが、(麻友め・・・・・・。)とそっと愚痴る。
 発進許可のサインが表示されたので、フットペダルを踏み込む。それに連動して<ツバキ>の“足”が上がり、前進。PAの操作はMSとそれほど変わらないが、大きく違う点もいくつかある。フットペダルが代表的で、MSにはあるブースター等がPAには無い。そのためMSでは複雑なフットペダルの操作がPAでは簡略化されている。
 ランチャーのターゲットは格納庫から150メートル程先にあり、それより50メートル前の発射位置まで走らせる。“走らせる”という事は、コクピットへの振動もすこぶるひどい。困るのは搭乗者だけなので、なかなか予算が回らないのだ。この座席もいつの物なのかわからない。やり場のない苛立ちは、思いっきりターゲットにぶつける事にした。



午前9時50分 “サディラ”入港ゲート付近

『こちらシグマ5。異常なし』
「了解。引き続き警戒を怠るな」
 通信終わり。連邦の艦隊が、サイド5へ接近しているという情報が入ってから一週間。新造艦である、レクイエムに着いてからまだ二週間も経っていないというのにこの隠密作戦。国際連合軍量産機のコクピットの中で、ギル・ロジェスタ大尉はふと考える。
 今時、時代遅れの「領域支配MS」の奪取が目的だが、実際はどうなのだろうか。既に白兵戦部隊はコロニーへ侵入しており、着々と準備を進めている。艦内では「両陣営、東雲重工共同開発の新型MSが二体ああり、この作戦で両機を手に入れようとしている」なんて噂も流れているが・・・・・・。
 緊急警報ではっとする。
(敵機? 数は・・・・・・どこに!?)
 レーダーに次々と敵機が表示される。数は8。二個小隊ほどの数のMSが、どうやって監視網をくぐり抜けてきたのか。今はそれを考えている暇はないが・・・・・・。それよりもこれほどの数を投入する必要がある理由―
(噂は本当だというのか?)
 漆黒の戦場に、またひとつ巨人が向かった。



午前10時15分 東雲高専 総合演習所 

 ひと通りの実験を終えようとしていた時、‘それ’は現れた。
 コロニーの工業ブロックの方が、爆発に飲まれる。遅れて凄まじい轟音が鳴り響く。次いでサイレンが。非常事態宣言発令とのアナウンスも入る。<ツバキ>のメインカメラで、爆発した方を拡大すると、数機のMSらしき影を視認できた。
(あれは・・・・・・MS・・・・・・!?)
「MSが来てます! 早く逃げて!」
 外部スピーカーで周りにいた人たちへ叫ぶ。近くのシェルターが展開され、彼らはそこへ逃げていく。
「啓! 早く降りてこい!」
 先輩や先生たちが促す。降りるべきなのだろうが―
「蓮と麻友を助けてきます! 商業ブロックと居住ブロックはあそこの隣なんだ!」
 フットペダルを全力で踏む。レーザーランチャーを構えたままなのでバランスを取るのが難しい。とりあえず高専を抜け、居住ブロック近くまで来たものの、脚部へのダメージも大きく、商業ブロックまで持つかも怪しい。
「頼むぞ・・・・・・<ツバキ>・・・・・・」
 そう叫んだ刹那、目の前にMSが現れる。曲線が取り入れられているところから、連邦の機体、<ファグナス>だと一目でわかる。そして構えられたライフルはこちらを向いていて―
「うわあああああ!!!」
 気づいた時には、自分がトリガーを引いていたことを知る。レーザーランチャーが発射され、<ファグナス>の頭部へ照射される。メインカメラを保護する樹脂は一瞬にして蒸発し、カメラは破壊される。あちらも民間機がいきなり攻撃してきた事には驚いているようで、後ずさる。
(これなら・・・・・・ッ!)
 後ずさった足へ、タックルをかける。<ファグナス>はバランスを崩し、そのまま道路へたたきつけられる。
「よしっ!」
 思わず声に出してしまう。この要領なら、MS相手でも立ち向かえるかもしれない。
(いけるっ。いけるぞっ)
 もちろん、そんな事は無い訳で。<ファグナス>の胸部の機関銃が火を噴く。戦闘用ではない<ツバキ>に装甲と呼べるものはなく、外装はすべて樹脂である。紙を破るかのようにして<ツバキ>は蜂の巣にされ、警報でモニターが埋め尽くされる。
「畜生! こんなところで!!」
 とどめの一撃を刺される直前、緊急脱出装置のレバーを引いていた。



 激突の衝撃と共に意識が戻る。脱出ポッドは‘軸’の外壁をえぐり、中央通路にまで来た所でスラスターが止まる。
 モニターはところどころがひび割れ、映像は映らない。体中が激痛による悲鳴を上げ、レバーを握った手が離れない。ようやく完全に目を開けたが、まだ視界はぼやけ状況を飲めていない。
「脱出・・・・・・した・・・・・・のか・・・・・・?」
 みんなや先生に何て謝ろうか。そんな事を一度考えたが、今すぐ逃げなければ。すぐさま思考は切り替わる。
 コクピットのハッチ―自動開閉装置は既に壊れているため、力ずくでこじ開ける。<ツバキ>とペイントされていた部分は剥がれ落ち、なんとか原型をとどめているものの、コクピット本体も一目でコクピット部とわからなくなっていた。
 ハッチから乗り出そうとした刹那、銃声が響く。とっさに音のした背後へ振り向きくと、そこには―
「モビルスーツ・・・・・・!?」
 横転した輸送用トレーラーに、巨大な人影が見える。そしてその周りには、連合、連邦のノーマルスーツを着た‘ヒト’が倒れている。そしてその体からは赤い液体が―
「大丈夫ですか!?」
 それまでの思考を止め、目の開いている人へ駆け寄る。が、息はない。その隣も、更に隣の‘ヒト’も、ライフルや拳銃を手にしたまま血を流している。
「や、やめろ・・・・・・やめてくれ・・・・・・ッ」
 急に目の前の光景を鮮明に捉え、死という単語が浮かび上がる。MSが侵入しただけでなく、白兵戦も繰り広げられている。人々はそれすら知らず、目の前の巨人から逃げ、叫び、命を散らす。たった少し前までは、いつもの日常を送っていたというのに。今まで紡がれてきた人生も、時間も、すべて一瞬に。
 近くでMSがビームを発射する音がし、オゾン臭が少しずつ漂ってくる。
 このままでは、すべてが無になってしまう。自分も、これからの未来も。
(しかし何ができる?)
 そうだ。一度<ツバキ>で立ち向かっているのだ。これ以上、危険を犯す必要はあるのか。早く逃げるべきだろうか。呼吸が乱れ、心臓がばくばくと音を立てる。
(こいつなら、出来るのか?)
 視線は目の前のMSへ注がれる。連合、連邦両陣営には見られないデザイン。また視認性の高い塗装から一目でワンオフ機だとわかる。試作機だろうか。バーニアなども見慣れない形状のものが多い。次第に視線は頭部へ移り、ツインアイ、Vアンテナの存在を知らしめる。ワンオフ機、ツインアイ、Vアンテナ・・・・・・。そして、東雲重工。
(まさか・・・・・・。そんなはずは・・・・・・)
 胸の高まりが増す。手足は震え、脳は現実を受け入れようとはしない。
 しかしこれは。数々の戦闘での‘英雄’にして、‘最強’の代名詞。その時代の、ありとあらゆる技術の結晶とも言える、伝説の機体。
「ガン・・・・・・ダム・・・・・・」
 一歩。そして一歩と、ガンダムへ近づく。コクピットハッチは開いており、モニタの光が漏れている。
(動かせるかもしれない)
 馬鹿だと思う。本当に馬鹿だ。もしここでこんな考えをしていなければ、何もかも関わらなくて済んだというのに。素直に人々を守りたいという気持ちもあったし、これなら逃げられるという考えもあったかもしれない。
 けれど、ガンダムという言葉はそれ程にまで自分を引き寄せたのだろうか。ガンダムに近づくにつれ心臓の鼓動は異常なまでに早くなり、全身の血液から熱を感じる。そっと、左腕の装甲に触れると、熱は爆発したかのように更に増す。
 轟音が鳴り響く。地面が揺れ、ライフラインを通す配管は破裂し、火災も発生している。オゾン臭は更に強くなり、人が、命が焼ける臭いで息が詰まる。火の手はすぐ近くにまで広がり、収まるようには見えない。スプリンクラーもただ水を垂れ流しにしているだけで機能してはいない。
 近くで起きた爆発と共に、全身の熱がある一点を超える。自分の思考よりも早く体が動き、装甲を登っていく。コクピットまでたどり着いた頃には、さっきまでいた場所は炎に飲まれていた。
 シートに腰掛け、起動スイッチを入れる。全天周(オールビュー)モニターの中心から、波の様なものが広がり、システムの起動音が鳴る。次いで核融合炉起動時独特の起動音が響く。更には新しいジェネレーターなのだろうか。聞いた事のないノイズも聞こえる。モニターには次々とOSの情報が流れていくが、これも見たことが無いものばかりだ。ふと操作できるのかと操作系に注視するも、通常のものと変わらない。火器管制は見慣れないが。
「ガンダム専用って事なのか・・・・・・?」
 そうつぶやくと、この機体についての情報が次々に表示された。どうやら起動には成功したらしい。
・・・・・・ゼット・・・・・・エックス・・・・・・ガンダム?」
=初めまして。私はに搭載されたAI、<キリハ>と言います。アニュアルにもあるとおり、あなたのサポートをさせていただきます=
「!?」
 突然頭の中に、女性の声が‘直接’入ってくる。高性能AIを搭載しているから、ガンダムタイプなのだろうか。成る程、テレパシーの様にして情報を送れば、反応は早いかもしれない。
=レーダーに敵機の反応を感知しました。数は5機。現在友軍機<テステント>2機が応戦中。以後、味方機をA-1、A-2と呼称。敵機は―=
 淡々とした声でそう告げられ、レーダーには味方機、敵機のマーカーが配置されていく。
「ゼクスと読むのか?」
=肯定です=
(ゼクス・・・・・・ガンダム・・・・・・)
 味方機のマーカーがひとつ減る。数で押されているのだろうが、連合軍やコロニーの防衛隊は何をしているのだ。
 自分が戦わなければという思いが強くなり、ジョイスティックを握り締める。この機体なら、蓮と麻友を助けに行ける。
「みんなを・・・・・・守るんだ・・・・・・。人殺しじゃなくて、守るために」
 再び荒くなってきた呼吸を整える。そして―
「行くぞ! <ゼクス>!!」
―時は動き始めた―




真・機動戦士ガンダムZX -ゼクス- 第一章 ~守るために~ 完


特殊用語補足(五十音順)

国際連合(こくさいれんごう)
人類移民時には、すべてのコロニーや人を管理する人類地球連盟が発足されました。
しかし権力が絶対的で、不正や汚職などが蔓延。各サイドごとでの自治権すら許されていなかったため、連盟本部のある月以外の全コロニーが独立を宣言。0076~0077年まで一年戦争(あるいはコロニー独立戦争)が勃発しました。
数で勝るコロニー側が勝利し、現在は各サイドごとに独立した国家となっています。国際連合はこのサイドの代表者が集まった組織で、代表者は選挙で選出されます。サイドごとの自治などは認められていますが、軍隊を持つ事は許されておらず、(コロニー防衛隊を除く)「軍」は建前上、国際連合軍しかありません。
連邦の地球帰還には断固反対しており、連合の監視衛星などが常時地球圏を監視しています。


東雲重工(しののめじゅうこう)
東雲重工業の略  East Cloud を略してECとも表記されます。
日本発祥の企業で、もともとは東京の町工場などが集まってできました。
(ここらへんについても、色々とストーリーを練ってありますので何らかの形で発信していきたいかなと考えています。)
初の国産MSを開発してから、徐々に発展。
全MSの6割は東雲重工製といわれる程の普及率で、両陣営のMSをも開発、生産しているという状態にあります。ぶっちゃけアナハイムの様なものですが、東雲重工は2090年からの老舗でその力も絶大です。


翔歴(しょうれき)
 西暦2170年の翌年から始まった、新しい年号です。戦争集結からではなく、コロニーへの移民開始(2152年)から18年。移民完了を記念して提唱されました。


フラカストロ粒子(ふらかすとろりゅうし)
0068年に発見
いかなる場所にも存在する粒子。そのままでは影響はありませんが、熱を持つと物質への侵食効果があり、人体はおろか、機械などにも悪影響を及ぼします。
微量な汚染は普段から受けていますが、戦闘(ビームライフルでの熱やMSの爆発時)での汚染量はかなりのものになってしまう事から、両軍とも汚染を抑えるために威力は制限してあります。更にはMSの動力源となる核融合炉からの汚染も酷いので、ジェネレーター出力も下がっている傾向にあります。


MS(もびるすーつ)
 主に宇宙世紀、コズミック・イラに登場するものに近いです。
 MSが実用化されたのが2085年。なので200年近く人類の主要兵器として君臨しています。数回の戦争などにより、技術も格段に向上しましたが、前述したフラカストロ粒子の影響でMSの性能は西暦のものと同程度、または西暦のものより劣るものまで退化しました。なのでビームよりも、実弾の方が好まれる傾向にあります。
基本的に動力は核融合炉ですが、粒子の影響を受けづらいバッテリー式も増えてきています。


惑星帰還連邦(わくせいきかんれんぽう)
0080年代後半から広まった地球帰還論。要するに「地球はもう汚染されて無いんだろうから帰りましょうよ」という人たちです。0089年には連合政府が治安維持を名目にMSを使用してデモ隊を鎮圧するなど、かなり過剰な反応を示しています。それに反発する形でサイド4,8,11が連合を脱退。そして結成されたのが惑星帰還連邦です。
独立戦争から20年と経っていなかったため、両陣営とも当初は平和的に解決していくはずでしたが、0092年月面都市フロンティアファーストでの、皇太子暗殺事件(月面都市は連合になってからも発言力が強く、皇太子は地球帰還論者を差別していました)により両軍が武力衝突。本作での戦争へと発展していきました。





次回更新は未定です。
啓の行動がメインで、裏で何が起きているのか描写が皆無でしたので、次章(下)ではそこら辺も書いて行きたいと思います。
なにより最後まで読んで下さった方々、本当にありがとうございます!
コメントで質問等くだされば、ネタバレにならない範囲で追加していこうと思います。
スポンサーサイト

Category: 真・機動戦士ガンダムZX(ゼクス)

TB: 0  /  CM: 0

top △

この記事に対するコメント

top △

コメントの投稿
Secret

top △

トラックバック
トラックバックURL
→http://soredemomamoritai.blog88.fc2.com/tb.php/462-165a3f86
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

top △

2017-09
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。